豪州と日本のはざまで小児集中治療を学ぶ

日本から豪州に渡ったPICUフェローである管理人が小児集中治療に関連するあれこれを勝手につぶやいているブログです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

Paediatric Intensivistに成人ICU経験が必要な理由。

もう2020年がおわりそうです。 いつもとはことなることが多くなった2020年でした。 いろいろと振り返ってみてるのですが、個人的に特に8月は変化の多い月でした。 メルボルンがStage 4 のロックダウンを宣言し、ほぼ外出はなくなり、 こどもを月~金は地元…

【論文】小児の敗血症に対するECMOの話

成人には通らない話が小児には存在する。 おそらく最初に挙がるのはHFOV。 これは成人ではみない。 小児ではまだ呼吸不全に対する選択肢のひとつだし、先日のeditorialでもあったように、たぶんHFVOを試すまではVV-ECMOに対して「saying no」なんだろう。 k-…

【論文】小児の維持輸液 ~等張液?低張液?

https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2772182?resultClick=1 JAMA pediatricsから。CCRのニュースレターにも紹介されてしまった。 いわゆるPlasmalyte(Na 140, K5, 5%glu)が低張液(Na 80, K20, 5%glu)に比べて電解質異常が多い…

【おすすめPodcast】Paediatrica Intensiva

Pediatrica intensiva: Art & Science of Pediatric Critical Care on Apple Podcasts 以前も紹介したこのPodcast、 当初はCovidに焦点をあてていたけど、 最近は先天性心疾患とくに単心室に話題を絞って内容を展開。 Boston Children、Royal Children @Melb…

【ひとりごと】パートタイムで修士大学院にいくこと

オーストラリアに来て半年たったところから、勤務先の隣にある大学のMPHに通い始めてからというものの、 毎年6月と11月が鬼門になっている。 試験期間だから。 修士大学院の試験やレポートって時間をかければかけるほど点数が伸びたり内容が充実したりするよ…

【論文】Saying no until the moment is right

https://link.springer.com/article/10.1007/s00134-020-06185-1 いわゆるEOLIAの結果みて、早くECMOにのせるというマインドだけではなく、 ECMOまでにできることは全部やってからECMOにしましょうね、という、 ごく当たり前に聞こえることをつらつらと書い…

【論文】上部消化管出血に対する内視鏡のタイミング

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1912484?query=recirc_curatedRelated_article 確か研修医のとき、 上部消化管内視鏡→GF 下部消化管内視鏡→CF とよんでました。あれってローカルだったのか、いまさらながら疑問に思っています。 ともあれ、 小…

ドラマ「半沢直樹」から感じたこと

オーストラリアでも日本のテレビは見れます。いくつかサービスがあって、今のところ家族は不満なくみています。 普段テレビは見ない自分です。見たとしてもNetflix のドキュメントだったりなんですが、 「半沢直樹」は2013年の初回のやつから毎週観てました…

【論文】Critical Conversations  ~これを言え、それは言うな~ CHEST2020

Chestからこんなのがでてました。 Critical Conversations Say this, Not that 日本と”海外”でよく比較される終末期の議論ですが、 確かに日本にいるときはWithdrawとよぶ積極的な治療の手控えというのはやっていませんでした。抜管したり、投与薬を止めたり…

勤務形態の話。

どうも僕です。 6連勤の6日目です。ここまでくると疲れているけど、その先の休みが目の前に見えるので、ちょっとうきうきしてきます。 こちらにきてから2施設目と、そんなにひろい経験はないのですが、 もちろん施設によって勤務形態、シフトの入り方が異な…

【今日の学び】VA ECMO の基本事項

昨日のVVに続き今日はVA ECMOの回診で学んだことを羅列します。 1. 基本事項 - ECMOサポートは十分か? ECMO flowは十分か? 患者の循環は確立されているか? - 合併症はどうか? 原疾患に伴う合併症はあるか? ECMO関連合併症はあるか? - どのように臨床を…

【今日の学び】VV ECMOの基本事項

成人ICU出向中のPICUが学びを備忘録的に記録していくシリーズ。 VVは小児となるとだいぶ少ないです。たぶん。アメリカとか知らないけど、年間1500入室みてる施設で3-5くらいが相場だと思います。 理由はあんまり考えたことないけど、 そもそも小児のARDSって…

Mixed venous oxygen saturation (SvO2)の基本事項

概要 SvO2とは、肺動脈血の酸素飽和度である 基本的には肺動脈カテーテルが必要 血液が全身を環流し、酸素消費量と酸素供給の最終結果である 基本事項 酸素供給 DO2=(心拍出量 COx Hemoglobin x SpO2 x 1.34(pHによって多少変動))+(PaO2 x 0.003) SvO2 = …

なぜ”平均”血圧を指標にするのか?

おそらく多くに救急外来や病棟では、収縮期血圧を指標に血圧の測定と評価がされているのではないかと思いますが、 ICUにおいては、PICUも例外ではなく、平均動脈血圧Mean Arterial Pressureが主な指標にされていることが多いと思います。 その理由について、…

【論文】Goal of Careにおける会話スキル

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0025619620301506 昨今になりGoal of Careという言葉のほうをよく見かけるようになりました。 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcpc2002419 https://www2.health.vic.gov.au/hospitals-an…

オーストラリアで医師として働く方法

今回はときどき質問をうける事項に対しての返答をまとめてみました。 オーストラリアでの臨床はアメリカと比べるとマイナーではありますが、 確立したトレーニングプログラム 待遇のよさ 治安のよさ 外国人の受け入れの多さ 等々からすると、一考する価値は…

症例問題 2 TGA-IVS

1, Transposition of the great arteries and intact ventricular septum (TGA-IVS)に対する重度低酸素に対して酸素化を改善するための方法を段階的に記載してください。 2, Balloon atrial septostomy(BAS)をPICUで行うにあたっての留意点を語ってくださ…

臨床に必要な英語力~IELTS 7.0の向こうにあるもの

きたー、ありがちなタイトル 私はいわゆる純ドメです。 生まれてこの方教育はすべて日本語で修了し、 仕事もすべて日本語でやっていました。 学生時代はまさか自分が日本の外で臨床するなんて夢にも思っていなかったので、 臨床研修が修了し、 後期研修が終…

PICUの回診ってどんな感じ? Part 2

前回は一般的な回診のスタイルと回診の質向上のための要素を書きました。 では実際どのような感じでここ豪州では回診しているのでしょうか? 平日日勤帯を例にして書いていきたいと思います。 前回かいた通り、回診はすべてベッドサイド回診のスタイルで行わ…

PICUの回診ってどんな感じ? Part 1

「あなたのユニットはどのように回診していますか?」 カルテ回診、ベッドサイド回診、 患者のプレゼンを医師がする、担当看護師がする、 薬剤師がいる、理学療法士がいる、 他科も混じる etcetc... 回診のスタイルってユニットによってそれぞれですよね。 …

膿胸Empyemaの問題解説

膿胸について 「なぜ膿胸?」 実は日本で診療している10年間、小児の膿胸というのはほとんど記憶にありません。 ただ、オーストラリアにきてからやたらと膿胸に対して胸腔ドレーンいれることが多く、 この件を取り上げてみました。 (あとは初回の問題にする…

HFOは死なない

当院で使用しているOscillator/ HFOV ・・・「死なない」っていうと大げさかもしれません。。 「まだ死んでない」くらいがいいのかなあ。 今回の記事では、 HFOV high frequency oscillatory ventilation、高頻度振動換気法について書いてます。 オーストラ…

豪州PICUでの診療体制

(写真:アフロ) 「オーストラリアで働くってどんな感じ?」 正直なところ診療体制といっても、その施設でまちまちなので一般化はできないと自覚しておりますが、 あくまでひとつの形と共通言語として記録しておきたいと思います。 私が勤務するPICUでは、…

PICU医が参考にできるPodcast Part 1

完全に聞き取るのは未だに難しいですが、 参考になりますので、通勤時によく聴いてます。 小児に限ったものになると、 かなり限られてしまうので成人救急や成人ICUのネタも多いですね。 ①Pediheart: Pediatric Cardiology TodayRobert Pass https://podcasts…

症例問題 1 膿胸

生来健康、予防接種はアップデートされている4歳女児。5日間の咳嗽、発熱、増悪する呼吸困難で救急外来受診。診察所見:体温38.5度、呼吸回数40回/分、軽度呼吸努力上昇、心拍数150/min、血圧78/33 (55)SpO2 92% in room air, 96% 2L/min鼻酸素胸部レントゲ…

脳死は人の"生物学的"死か?

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2765666 今月のJAMAから。Boston Childrenからです。 要は、臨床家は脳死と生物学的死を同一に「死」と扱うことがあるけど、 脳死というのは生物学的死とは違って、道徳的なものであって、 脳死の診断・…

臨床家は川崎病類似のCOVID19関連炎症症候群についてなにを知っておくべきか?~SCCMからのMIS-Cについて

SCCMから下記の記事が更新されました。 https://www.sccm.org/Blog/May-2020/What-Critical-Care-Clinicians-Need-to-Know-Today-A?utm_source=5-22-2020%20COVID%20Update&utm_medium=Email&utm_campaign=COVID-19%20Emails&_zs=o8psf1&_zl=X3Co6 要点とし…

私は何者なのか~初めての方はこちらへ

ああ、きれいなメルボルンの夜景よ 世の中ではコロナウイルスが猛威をふるい、こどもが家内にスタックし、もんもんとした日々を送りながら、ブログ開設にいたるという。 私は卒後10年を超えた、小児集中治療科医です。 Pediatrics小児科学のICU版なのでPICU…