「あなたのユニットはどのように回診していますか?」
カルテ回診、ベッドサイド回診、
患者のプレゼンを医師がする、担当看護師がする、
薬剤師がいる、理学療法士がいる、
他科も混じる etcetc...
回診のスタイルってユニットによってそれぞれですよね。
私もここオーストラリアでは一つのユニットでしか勤務したことがありませんが、
大抵どこも同じような感じのベッドサイド回診をしているらしいです。
これには実は背景があり、
オーストラリアニュージーランド集中治療学会のポリシーに、
以下のような記載があります。
...specialist must see all patients under his/her care with junior staff at least twice daily and set a management plan, in the form of a structured bedside ward round.
つまり、
- 一日少なくとも二回、
- 集中治療専門医が、
- ジュニアスタッフとともに、
- 体系立てられた、
- ベッドサイド回診で、
- 患者の方針を決める
というのが、学会から要求されているのです。
私は日本にいた時はカルテ回診がメインのユニットでトレーニングを積んだので、
最初は適応するのに時間を要しました。
ただ慣れてしまった今は、このスタイルのほうが好きです。
日本の多くのユニットは、聞くところによると、
カルテ回診・カンファレンスルーム回診がメインだと思います。
ではベッドサイド回診とカンファレンス回診、
どちらが優れているということはいえるのでしょうか?
ベッドサイド vs カンファレンスルーム回診
そもそも、「ベッドサイド回診」とは、
診療チームが直接患者のベッドサイドに行き、そこで議論し、診療方針を決定する。
「カンファレンスルーム回診」とは、
大きいミーティングルーム等に関連ある人達が一同に会し、
カルテを供覧しながら議論し診療方針を決定する。
というものです。それぞれに強みと弱みがあります。
ベッドサイド回診の利点
- 患者を直接みながら議論ができる
- その時の診察所見をとれる
- 担当看護師から直接話が聞ける
ベッドサイド回診の欠点
- 時間が長い
- 情報の共有が(時に)難しい
- 担当科と同時に議論するのが難しい
カルテ回診の利点
- 時間が比較的短い→担当科やその他の職種をよびやすい
- 情報の共有が通常容易
- 回診後の初動が早い時間に可能
カルテ回診の欠点
- 患者を直接みず、
- また担当看護師の話がきけないので、
- いざ計画をたてても実際はできない可能性がある
です。
なので、プラクティスさえ積んでいけばどちらでもいいってことにはなく、
”効果的なICU回診にNo Gold standard approach” ってことで、
どんな手法でもローカルの事情で適宜調整されながら洗練されていくんだと思います。
効果的な回診、効率的な回診
では、どのようにしたら効果的な回診ができるのでしょうか?
以下のような要素が挙げられています。
- なんでも言いやすい環境・雰囲気
- 無駄な時間の排除
- 患者情報へのアクセスのよさ
- 目標(Goals)の議論と記載
- 標準化された構成とプロセスがある回診
- チェックリストの使用
- 薬剤師の参加
- 多職種の参加
- 医療者の自律
- 医療者の明確な役割
- 回診に参加している医療者が実際そこにいること
逆に効率的な回診の阻害因子とは・・・
- 中断が入ること
- 長時間にわたる回診
- 画一化されていない回診
- そこにいる医療者の「無力感」「無価値感」
- 電子カルテの使用
- 医療従事者階級化構造
働いたことがある人ならだれもがうなずける、
- 回診中にかかってくる電話
- 午前中に始めてランチタイムを過ぎたときの疲労感
- 突然形を変える回診スタイル
- 電子カルテの不具合
等々、、、
またヒエラルキーについての言及もありますが、
多少のヒエラルキーはしょうがないような気もするかもしれませんが、
ここでは医者内、看護師内の上下関係ではなく、
医師、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床工学技士などなどの職種間の階層
というのを考えてもらえればと思います。
実際の回診
では実際どのように回診を行っているのでしょうか?
次回に続きます。
参考文献:
- CICM Policy IC-1 Minimum Standards for Intensive Care Units
- Lane et al, CCM 2013
- Life in the Fastlane