きたー、ありがちなタイトル
私はいわゆる純ドメです。
生まれてこの方教育はすべて日本語で修了し、
仕事もすべて日本語でやっていました。
学生時代はまさか自分が日本の外で臨床するなんて夢にも思っていなかったので、
臨床研修が修了し、
後期研修が終わりかけた時から、
特にこれといったきっかけを思い出せないくらい、
なんとなく海外に行くって決めました。
そう、目指し始めたんではなく、
行くと決めました。
タイミングとしては小児科後期研修が終わって、
集中治療を日本で始めるときなんですけどね、
4年のプランで集中治療のトレーニングして、
その後は海外で研修するって、
自分の中で決まったんですね。
ということで、本格的に英語の勉強を始めたのは卒後6年目からでした。
行先はオーストラリアかカナダと思っていたので、
とりあえず3年でIELTS 7 each*1を達成して、
就活とかして4年終わったところでうまくつなぐという青写真を描いての開始でした。
IELTSというのは、まあ、非常によくできたテストです。
つい先週Podcastを聞いているときに知ったのですが、
膨大なデータ収集と解析を経ながら、
そのスコアと英語の実際の実力が相関するように改良がなされていて、
さらにカンニングできないようなシステムが徹底されています。
最初に受けた2014年5月のスコアが忘れもしない
Reading 5.5 Listening 5.0 Writing 5.0 Speaking 5.0 OA5.5。
最終的に目標スコアに届いたのが2017年3月だったので、準備開始して丸3年でした。
これも後になって知ったのですが、
日本人がOA0.5上げるのに平均200-300時間の英語学習が必要とされていて、
計OA1.5上げて7.0に届くのに600-900時間、
結構大変でした。
お金もたくさん飛びました。
参考書、オンラインやスクールにも行きましたし、受験回数は●●回、
IELTSは一回の受験料が25000円を超える高額試験なので、10回受ければ25万超。
・・・改めて書いていてなんか情けなくなってきたな
決して自分が近道を行けたと思っていないし、
もっと効率的に短期間にお金をかけずに達成できる人はたくさんいると思います。
ただそれと引き換えに手にしたIELTSスコア7.0は、
いわゆる英語の上級であるCEFR C1相当です。
こうなったらどれくらい英語圏で生活や仕事がスムーズにできるのかというと、
正直なところ、
まっっっっっっっっったく
といっていいほどに、
聞こえないし、伝わらないし、
読み書きのスピードは追いつかないし、
最初のころは本当につらかった。
一応日本でPICUのトレーニング終えてるし、
ちょっと上の仕事もしてから来たので、
来る前のイメージとしては、
たくさんこっちの上級医とディスカッションしたり、
時々自分の指摘や提案がチームを動かしたり
ということも少なからず期待していたのですが、
もう全くでした。
なのでこっちきてからというものの、
- UKから来た優秀な同僚のプレゼンをこっそり録音して行き来の車で聞いたり、
- 自分のプレゼンを録音してどうしたら伝わりやすいか確認したり、
- オンライン英会話は継続し、
- Netflixを契約して毎日聞いたり(観てない)、
- 発音矯正の講座やってみたり、
やっていますが、
ちなみに今もやっています。
たぶん自分は遅いほうだと自覚していますが、
1年くらいだったところですこしずつ動けるようになって、
1年半たってなんとなく感覚としては50%伝えられていて、50%理解できている
くらい、です。
はんぶんしか理解してない!!?
はい。まあそれでも何とかなってます(なってない部分も多々あるんだろうなあ)
英語圏で臨床をするための壁はたくさんありますし、
臨床を始めてからも壁はたくさんあります。
そしてイメージとしては、
その壁の高さ、超える難易度は指数関数的に上昇していきます。
しかも、その壁は、
臨床医にとっては越えなくてもいいものもたくさんあります。
また家族のトラブル等、自分の力が及ばないこともたくさんありますし、
時間が解決するにしてもその時間が足りない状況も十分に起こります。
臨床を英語圏で行うというのは、
英語をはじめとして(おそらく思った以上に)多くの困難があります。
もちろんプラスの面もありますが、
それが、それを得るためにかけた金銭、時間、精神的労力、をすべてを補填するわけでもありません。
むしろ、
英語の勉強とかせずにその時間を論文を書いたり大学院に行く時間に使ったり、
わざわざ海外で研修医みたいな扱いをうけるよりまっすぐ日本でキャリアの階段を上ったり、
したほうが、
いいのかもしれません。
どの道が正しいかとかメリットが多いとか、
その道を通る前から知っている人はいないので、
悩みます。
なので、私はこちらにきてからというものの、
「留学を勧める」
というスタンスはとっていません。
「海外で臨床したい」
という人の相談にはのり、事実を事実として伝えるようにしています。
ただ、PICUという視点からすると明確なメリットがあり、例えば
- 日本にはない(この枕詞いらんな)ハイボリューム
- 移植医療
- 教育
- 終末期の理解とスキル
- 搬送システム
- 世界とのコネクション
等々ですが、
日本でPICUをやっていく人には海外のハイボリュームPICUでトレーニングする期間を持ってもらいたいと思っているので、
そういうプログラムを作りたいと思いますし、
こちらでの余計な苦労が少しでも減るようにサポートしていけるようにしたいと思っています。
あ、違う、作りたい、じゃなくて、
つくると決めました。
ただこれはIELTSより時間かかりそうだなあ。
*1:International English Language Testing System。世界的に使用されている英語試験のひとつで、英語圏外から英語圏の大学に進学したり、就職の際に英語能力の証明として使用される。Reading, Writing, Listening, Speaking のパートがあり、それぞれに1-9のスコアがつけられる。オーストラリアで医療職として働くためには各パートで7以上が必要。オーストラリア医療者の就職にはTOEFLも使えるhttps://ieltsjp.com/