昨日のVVに続き今日はVA ECMOの回診で学んだことを羅列します。
1. 基本事項
- ECMOサポートは十分か?
- ECMO flowは十分か?
- 患者の循環は確立されているか?
- 合併症はどうか?
- 原疾患に伴う合併症はあるか?
- ECMO関連合併症はあるか?
- どのように臨床を前に進めていくか?
- なにか取り除けるサポートはあるか?
ECMO離脱できるか?抜管できるか? - 全体のプランはなにか?
ECMOはどこにつながるか- bridge to recovery or VAD/transplant?
GOCの見直しが必要でないか?
2. ECMOのサポートが十分かどうか、どのように評価するか?
考慮すべきこと - ECMOの循環と患者本人の循環
ECMO循環
- MAPは目標値にあるか?
成人は通常MAP>60(小児は年齢と病態による)。MAP>80になると左室後負荷上昇に伴い十分なECMO流量を保つことが難しくなる。 - 臓器還流不全の兆候はあるか?
乳酸値、尿量、皮膚冷感/色調、意識レベル(抜管患者) - 患者の循環は確立されているか?
患者の循環
心拍出量は非常に低い場合
- LVでの血流うっ滞→血栓形成
- LV拡大→心筋回復の遅延と冠血流阻害
- 大動脈弁逆流の悪化→LV拡大
- LA 圧の上昇→肺うっ血
心拍出量が高い場合
- ECMOが心筋の回復に貢献していない可能性
- 高容量のinotorpes→虚血の可能性
- Defferential hypoxia
その他
- inotropesの必要量の見直し
多少の拍出があり、その他の合併症を予防できる最低量 - LVうっ滞・拡大のリスク減少
動脈圧ラインで拍出量を予測
心エコーでLV、大動脈弁逆流を評価 - RV/LVに対する前負荷が十分であることを確認する
3. ECMOの患者由来合併症
Sepsis
- 真菌まで考慮。カニューレが抜けるまで続くこともある。
出血
- 抗凝固されていることを念頭に
- カニュレーションサイトの診察
- その他の出血源(後腹膜、胸・腹腔内)
- 出血に伴う凝固障害を考慮
- 血小板減少
- DIC
- 線溶系亢進、後天性 von Willebrand syndrome
肺うっ血
- LVうっ滞 and/or 大動脈弁逆流→LV拡大→LA 圧の上昇→肺うっ血
タンポナーデ
- 拍出量の低下、CVP上昇、アクセス不良 がサイン
血栓(患者の)
- LV内血栓、動脈血栓、DVT、PEなど
- HITTを疑った場合、代替の抗凝固薬を検討する
Differential hypoxia
- 患者からの心拍出とECMO(大腿送血カニューラ)から送られてくる血流の、合流するポイントが脳血流を環流できない部位で起こること。通常右橈骨動脈の血液ガスでモニタリングする。
下肢血流に伴う合併症
- 下肢過剰血流:送血・脱血カニューレが同側下肢に留置された場合に起こることがある。コンパートメント症候群に至ることもあり、カニューレ戦略を変更と減張切開の考慮は必要となる。
*これは成人では基本的には別々の下肢にカニュレーションするという戦略が成立している一方で、小児で外科にカットダウンでカニューレ留置をしてもらう場合、手間とスピードから片側下肢に送脱血カニューレを留置することが少なくありません。
それに伴い下肢の過剰血流でコンパートメントに至ることは少なからずありますので注意が必要です。小児患者でこれが起こってしまったときに成人ICUがバックグラウンドの同僚は「みたことねーな、そもそも同じ足にカニュレーションしないし」って感じでした。
- 下肢過少血流:下肢を環流するための逆行送血に問題がある場合に起こる。
神経学的合併症
- せん妄、けいれん、脳血管障害、脳出血等々。
腎傷害
- 体液量調整のためにRRTが必要になることがある。閾値は低め。
4. ECMO由来合併症
脱血不良
血栓
溶血
出血
VVと同様
5. 毎日記載・確認すべきこと
- ECMOのタイプ、カニュレーションサイト、ECMO日数、回路日数
- 患者経過
- 循環のパラメーターと目標値
MAP、ECMO flow、カテコラミン投与量の幅、酸素化、IN/OUT目標、輸血閾値、鎮静目標
- 抗凝固
- その日のプランと目標