豪州と日本のはざまで小児集中治療を学ぶ

日本から豪州に渡ったPICUフェローである管理人が小児集中治療に関連するあれこれを勝手につぶやいているブログです。

Paediatric Intensivistに成人ICU経験が必要な理由。

もう2020年がおわりそうです。

 

いつもとはことなることが多くなった2020年でした。

いろいろと振り返ってみてるのですが、個人的に特に8月は変化の多い月でした。

 

メルボルンがStage 4 のロックダウンを宣言し、ほぼ外出はなくなり、

こどもを月~金は地元校のホームスクール、

日曜は日本人校のホームスクール、

 

大学院は新しいタームが始まり、

 

そんな中で自分は職場が変わり、

なのに登録の移行がうまくいかず3週間くらい家にいるだけの生活で、

 

ストレスが溜まり切ったわが家は、新しい家族を迎いいれました。

 

 

 

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いっぬ

 

 

飼うにあたってはかなり葛藤がありました。

現時点では日本に1-2年以内に帰る予定なので、

旅行いくときにどうするかとか、帰国した時に家がペット相談可に限られるとか、

帰国して落ち着いてから飼おうと思ってたんです。

 

ただまあいろいろ考えて今になりました。

来たばかりのときはかなり小さくて、家のなかをちょろちょろしていましたが、

 

いまは結構大きくなって庭を駆け回ってます。 

 

 

・・・本題からはずれました。

 

 

ということで8月から小児病院を離れ、成人病院のICUにきました。

 

「小児のICUの人が成人のICUにきてなんになるのか」

と思う人は多いかもしれません。

むしろ新生児のNICUのほうが親和性と互換性があると思っている人もいるのではないかと想像します。

 

 

ただ実際のところは、NICUとPICUの患者群は大きく異なり(もちろん施設にもよりますが)、

 

呼吸器の設定だったり、カテコラミンの使い方だったり、

いろんなことがPICUは成人ICUの派生である部分が多いのです。

 

ここオーストラリアでは、

成人ICUのトレーニーは最低6か月のPICUのトレーニング期間が必要で、

PICUのトレーニーは同様に6か月の成人ICUの期間がありますが、

NICUのトレーニング期間は必須ではありません。

 

その背景には上記で述べたようなプラクティスの違いと、

学会自体がPICUは成人ICUと同じ学会であり、

NICUは小児学会の傘下にあるという構造的な違いからも来ています。

 

 

ただ個人的にはそういったことをのぞいたとしても、

PICUのトレーニーには成人のトレーニングの期間が必須と考えています。

その主たる理由は、

 

・特定の疾患群の患者数

 

・重症度の違い

 

です。

 

 

特定の疾患群の患者数について

 

成人では当たり前の救急集中治療疾患が、小児では来るけど小児施設だけでは数が足りないものがあります。

それは主に外傷(と熱傷)です。

PICUでも見るには見るけど、当たり前のようには来ないので、外傷診療の小児施設における不慣れ感というのは、どうしようもない部分があります。

一方で日本においても外傷センターにおける成人症例は小児と比較して

 

  • 重症度が高く
  • バラエティに富み
  • 症例数が多い

 

ので、

ある一定期間成人施設にいることでこれに対する「慣れ」が、ある程度でき、

小児に応用ができるようになったり、

小児施設でいかに重症外傷に対応すべきか、

どこまで成人施設でみてもらってどこから小児施設でみるのが患者にとって適切なのかなどなど、

 

ローカルのマニュアルつくりにも大きく役にたつと思っています。

 

また特に日本においては外傷診療における小児施設の成人との交流は、

患者のアウトカムを最善化するには必須なので、そういった意味でも人材を交流することは関係性の維持に役立つでしょう。

 

 

 

重症度の違いについて

小児はICUといえども成人ほど重症度の高い患者数は多くありません。

とにかく、成人ICUでいまやっていて思いますが、

成人重症患者の多臓器障害に至る割合は小児と比較して段違いだと思います。

 

例えばCRRTの登場機会の頻度は小児と成人では大きく違います。

小児の施設にもよると思いますが、おそらく成人では毎日回っているのが普通でしょうが、小児ではそこまでいきません。

 

その割にはいざCRRTが必要になったときの小児患者の重症度は高く、回さないと今死ぬ、というような肝不全が、来るときはきます。

 

成人で多臓器不全や、高容量のカテコラミンを要する敗血症や、VV ECMOが必要なARDSをみることで、

 

頻度が少ない小児でのそういったデバイスや診療の流れ・ルーチンにより慣れる、ということにつながると思っています。

 

 

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ということで、なんの科学的根拠もない個人的意見をつらつらと書きましたが、

基本的には成人のトレーニングは、必須だと思っています。

 

 

 

ということで成人救命救急のみなさまどうか小児を専門にしているトレーニーの受け入れと交流にご理解をお願いします。

 

 

 

あと最後に書いておきたいのは、

 

上記のこういったことは医師のみにかぎりません。看護師の専門性といったことからもPICUのナースは成人ICUでの経験は非常に役に立つでしょう。

ただし、私がみてきた日本の小児病院のICUのナースはほとんどが小児科の経験しかありません。しかもある程度経験してなれてきたところでまた小児科病棟に回されてしまって、残念な思いを何度もしてきました。

 

オーストラリアにきてから、PICUでも成人ICUでもナースはほとんどが集中治療の卒後教育を修了した人で、

別の施設のICUとPICU双方で働いている人がかなりいます

もちろん小児病院内での異動もありますが、

看護スタッフがいろんなデバイスや重症に慣れてくれていることはユニットの診療レベルおよび安全の担保に大きく貢献します。

 

ナースだけでなく、薬剤師、工学技士、リハビリ、栄養士等々、PICUにも成人の集中治療の知識がある人がどんどん入って来てくれるといいなと思いますし、

PICUからも積極的に成人施設に経験を積めるように人材を共有することが可能になればいいなと

成人にきてから改めで強く感じている今日この頃です。

 

 

いっぬも含め今後ともよろしくお願いいたします。