豪州と日本のはざまで小児集中治療を学ぶ

日本から豪州に渡ったPICUフェローである管理人が小児集中治療に関連するあれこれを勝手につぶやいているブログです。

帰国後

あっという間に一年が経ちました。 職場の受け入れは非常によく、科内は上司同僚の理解が良い部署なので快適に過ごしています。 他科に関しては、今当科のメンバーがほとんど生え抜きで、自分が普段やっていないプラクティスを持ち出したり、患者の主導権を…

【雑感】帰国3ヶ月

とりあえず言いたい。 サックスが楽しい。 毎日はできてないけど、概ね毎日平日30分、休日や当直明けは1時間くらい。 とりあえず1冊基礎的なやつを一回通して終わり、練習のルーチンとしてスケール・ロングトーンから曲の練習という流れが出来始めて。初…

忘れられない勤務 ①Taking a sad day

このタイトル「豪州と日本の間で、、、」をつけてブログをやってみようと思ったとき、自分の豪州での臨床が終わったらどうなるだろうというのは、少し思っていた。 でも、まあこういうタイトルの方が見つけやすかったり、実際豪州臨床に関連して書いてきたこ…

【PICU教育】「小さいPICU」でのトレーニングは「大きいPICU」に異動する前段階になり得るのか

どうも僕です。 オーストラリアは季節が月で明確に区切られています。 春 9-11月 夏 12-2月 秋 3-5月 冬 6-8月 といった感じです。 日本は体感で、「もう秋だね」と言った感じですが、ここら辺もオーストラリアにいての違和感。 今10月も終わりに近づいて、…

【AMC clinical】受験までの経過のまとめと、オーストラリアに残りたい人に向けて

前半はコチラ 後半はコチラ 1. さよならAMC 前回までに書けてなかったことも含めて、まとめると以下です。 準備期間は2021年10月から2022年4月の6ヶ月間 勉強時間は800時間 やったことは- 対策コース12週間とその教材- Handbook 2周- Recall- 過去問集の産…

【AMC clinical】受験準備開始から受験までの流れとやったこと[後半]

前半はこちら。受験日が決定したところまででした。 k-doc.hatenablog.com 1. 勉強のリソース 予備校の資料 リコール handbook 教科書 Murtagh Tally and O `Connor's Youtube ①Geeky Medics ②Physiotutors Study partner 1. 勉強のリソース 受験日が決定し…

【AMC clinical】受験準備開始から受験までの流れとやったこと [前半]

前回AMCの実際の試験の内容を紹介しました。 k-doc.hatenablog.com 今回は、実際に試験準備から試験までの経緯を紹介し、 こうやったら落ちたよ、っていうのをシェアしようと思います。 この試験はトリッキーな試験ではありますが、きちんと準備したら合格す…

【AMC clinical】AMC clinical の実際の問題

参考までに、自分が受験した時の問題16問を掲載しておきます。 全て記憶頼りなので、正確性には乏しいですが、雰囲気が伝わればいいなと 16問中、2問はスコアの対象にならないパイロット問題で、14問中10問パスで合格です。どれがパイロットかはやっている…

【AMC Clinical】終了後の雑感

さて、前回のブログはスタートでしたが、半年を経て受験を終了しました。 そもそも、この試験、医師登録資格が今年の8月で切れる中で、 自分の豪滞在を半年伸ばすためだけの目的で受験をしようと思い立ったのです。 8月の再登録に間に合わせるためには、 大…

【AMC Clinical】スタート

ビクトリア州はワクチン接種率上昇を受けて、世界で最も厳しく長いロックダウンに終わりが見えてきました。 と、みんなが喜んでいる傍でひっそりと職場でPrimary close contactに認定され、14日の出禁をくらっています。 部屋も家族から隔離し、食事を運んで…

【豪州臨床】次回以降の医師登録更新はないよ、と通達された話。

どうも。 メルボルンは週末を経てサマータイムに以降しました。 未だにこのサマータイム制度を続けているのに理解が苦しむところですし、 何より生活のアジャストがボディブローの様に効いているので早く撤廃してほしいところですが、 とりあえず日本との時…

【豪州臨床】専門医なし、general registration なしで臨床を4年以上やる方法。AMC MCQ対策含

12ヶ月の成人ICUを終えて、小児病院のICUに戻りました。 自分は2018年8月にオーストラリアで臨床を開始、2年を小児ICU過ごし、 2020年8月から成人ICUで臨床をする機会をもらいました。 計三年を経て、再度もともといた小児病院のPICUで働く機会をいただき…

【雑観】終末期における選択肢

あたりまえではあるけど、利用可能な医療リソースが違うことで起きている日常診療の選択肢の違い、というのがいまさらながらに目の前に転がってきて、これはこれで興味深い。 日本でみたものは、移植の選択肢が薄いからECMO導入をためらう、挿管したあとの緩…

【雑談】オーストラリアにきてから初めて引っ越した話。

3月に引っ越しました。 特に予定はしていなかったんですが、 ずっと続いていた床下の水漏れが直らず、悪化の一途をたどる中でさらに急激に悪化。 いたるところの床の板の継ぎ目から水が染み出し、しかも原因が不明であるため大規模な工事が必要となり、家主…

新生児~小児期のECMO後フォローアップが必要である。という論文

ECMO 小児の頸部カニュレーション図 こちらから。https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2776777 新生児期小児期のECMOは成人と比較して頸部のカニュレーションの頻度が高く、 しかも頸動脈カニュレーションしたあとは結紮してしまう…

【雑感】小児科医が集中治療をすることになったら

先日、日本の小児科後期研修医およびPICUローテート中の小児科バックグラウンドの方にPICUの基礎的なお話をする機会がありました。 その際に「小児科医から小児集中治療分野に移行する際にはハードルがある」ということを言いました。 その意図としては、小…

【今日の学び】Heparin Induced Thrombotic Thrombocytopaenia Syndrome

特に小児でECMOを回しているとコンスタントに血小板が低下します。 それで4Tsクライテリアを満たしてときどき抗凝固を変更するんかってなることがあるんですが、 成人で発症率がヘパリン使用者の中で1-5%で小児ではさらに有病率が少ないと報告されている*1…

Paediatric Intensivistに成人ICU経験が必要な理由。

もう2020年がおわりそうです。 いつもとはことなることが多くなった2020年でした。 いろいろと振り返ってみてるのですが、個人的に特に8月は変化の多い月でした。 メルボルンがStage 4 のロックダウンを宣言し、ほぼ外出はなくなり、 こどもを月~金は地元…

【論文】小児の敗血症に対するECMOの話

成人には通らない話が小児には存在する。 おそらく最初に挙がるのはHFOV。 これは成人ではみない。 小児ではまだ呼吸不全に対する選択肢のひとつだし、先日のeditorialでもあったように、たぶんHFVOを試すまではVV-ECMOに対して「saying no」なんだろう。 k-…

【論文】小児の維持輸液 ~等張液?低張液?

https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2772182?resultClick=1 JAMA pediatricsから。CCRのニュースレターにも紹介されてしまった。 いわゆるPlasmalyte(Na 140, K5, 5%glu)が低張液(Na 80, K20, 5%glu)に比べて電解質異常が多い…

【おすすめPodcast】Paediatrica Intensiva

Pediatrica intensiva: Art & Science of Pediatric Critical Care on Apple Podcasts 以前も紹介したこのPodcast、 当初はCovidに焦点をあてていたけど、 最近は先天性心疾患とくに単心室に話題を絞って内容を展開。 Boston Children、Royal Children @Melb…

【ひとりごと】パートタイムで修士大学院にいくこと

オーストラリアに来て半年たったところから、勤務先の隣にある大学のMPHに通い始めてからというものの、 毎年6月と11月が鬼門になっている。 試験期間だから。 修士大学院の試験やレポートって時間をかければかけるほど点数が伸びたり内容が充実したりするよ…

【論文】Saying no until the moment is right

https://link.springer.com/article/10.1007/s00134-020-06185-1 いわゆるEOLIAの結果みて、早くECMOにのせるというマインドだけではなく、 ECMOまでにできることは全部やってからECMOにしましょうね、という、 ごく当たり前に聞こえることをつらつらと書い…

【論文】上部消化管出血に対する内視鏡のタイミング

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1912484?query=recirc_curatedRelated_article 確か研修医のとき、 上部消化管内視鏡→GF 下部消化管内視鏡→CF とよんでました。あれってローカルだったのか、いまさらながら疑問に思っています。 ともあれ、 小…

ドラマ「半沢直樹」から感じたこと

オーストラリアでも日本のテレビは見れます。いくつかサービスがあって、今のところ家族は不満なくみています。 普段テレビは見ない自分です。見たとしてもNetflix のドキュメントだったりなんですが、 「半沢直樹」は2013年の初回のやつから毎週観てました…

【論文】Critical Conversations  ~これを言え、それは言うな~ CHEST2020

Chestからこんなのがでてました。 Critical Conversations Say this, Not that 日本と”海外”でよく比較される終末期の議論ですが、 確かに日本にいるときはWithdrawとよぶ積極的な治療の手控えというのはやっていませんでした。抜管したり、投与薬を止めたり…

勤務形態の話。

どうも僕です。 6連勤の6日目です。ここまでくると疲れているけど、その先の休みが目の前に見えるので、ちょっとうきうきしてきます。 こちらにきてから2施設目と、そんなにひろい経験はないのですが、 もちろん施設によって勤務形態、シフトの入り方が異な…

【今日の学び】VA ECMO の基本事項

昨日のVVに続き今日はVA ECMOの回診で学んだことを羅列します。 1. 基本事項 - ECMOサポートは十分か? ECMO flowは十分か? 患者の循環は確立されているか? - 合併症はどうか? 原疾患に伴う合併症はあるか? ECMO関連合併症はあるか? - どのように臨床を…

【今日の学び】VV ECMOの基本事項

成人ICU出向中のPICUが学びを備忘録的に記録していくシリーズ。 VVは小児となるとだいぶ少ないです。たぶん。アメリカとか知らないけど、年間1500入室みてる施設で3-5くらいが相場だと思います。 理由はあんまり考えたことないけど、 そもそも小児のARDSって…

Mixed venous oxygen saturation (SvO2)の基本事項

概要 SvO2とは、肺動脈血の酸素飽和度である 基本的には肺動脈カテーテルが必要 血液が全身を環流し、酸素消費量と酸素供給の最終結果である 基本事項 酸素供給 DO2=(心拍出量 COx Hemoglobin x SpO2 x 1.34(pHによって多少変動))+(PaO2 x 0.003) SvO2 = …