豪州と日本のはざまで小児集中治療を学ぶ

日本から豪州に渡ったPICUフェローである管理人が小児集中治療に関連するあれこれを勝手につぶやいているブログです。

【論文】Goal of Careにおける会話スキル

f:id:K-doc:20200718133612p:plain

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0025619620301506

 

昨今になりGoal of Careという言葉のほうをよく見かけるようになりました。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcpc2002419

https://www2.health.vic.gov.au/hospitals-and-health-services/patient-care/end-of-life-care/palliative-care/essential-elements/goals

 

正確には、

「明確なGoalsはEnd of life careの質をよくする」

ってことなんですが、

 

冒頭の論文では実際その会話を患者・家族とする際のスキルとして3step approachを提唱しています。

Stage 1: Sharing knowledge

Stage 2: Clarifying GOC

Stage 3: Negotiating treatment options

 

Jacobsenらhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29305320/

は2018年に同じような3step approachを提唱していますが、これらはより

「どこに・どのように会話の着地点を置くか」

に焦点があるように思われます。

 

それと比較し今回のLu and Nakgawaはより段階的なアプローチ、

「情報の共有」と「患者のゴールを明確にする」

ことをより強調しています。

 

お楽しみください。

 

 

 

個人的には今回のLu and Nakagawaの 3 stage approachは日本にはよくフィットするのではないかと思います。

 

理由としては、とくにStage1で

「Share the Prognosis」

が強調されているからです。

 

日本の小児集中治療の現場において、

GOCの会話が進まない理由の大きなひとつとして

「医療者が明確な予後予測を伝えていない」

ことがあると思っています (エビデンスはありまてん)。

 

そもそも、このapproachの最初の時点で躓いていることが多いから、

そのあとの会話もなんとなくの話になり、

踏ん切りがつかず、、

 

という場面や話をしばしば見聞きします。

 

確かに、医者の見立ての予後予測なんで外れることはあります。

ただ、経験、エビデンス、その時の状況から、

どのような経過を患者がたどるかは伝えられるし、

その会話にあたる医師はそれが伝えられる(メンタル・コミュニケーション双方における)スキルを持ち合わせる必要があります。

 

悲しいニュースを伝えるのは、伝える側にも大きなストレスがかかります。

ただし、そのストレスから逃げていては、

苦しんでいるこどもやその家族を、より苦しめる可能性が大いにあります。

 

その子のために、家族のために、事実を明確に伝え、

そのこのゴールを、真摯に検討できるようになりたいものです。