豪州と日本のはざまで小児集中治療を学ぶ

日本から豪州に渡ったPICUフェローである管理人が小児集中治療に関連するあれこれを勝手につぶやいているブログです。

【雑感】小児科医が集中治療をすることになったら

先日、日本の小児科後期研修医およびPICUローテート中の小児科バックグラウンドの方にPICUの基礎的なお話をする機会がありました。

 

その際に「小児科医から小児集中治療分野に移行する際にはハードルがある」ということを言いました。

 

その意図としては、小児科バックグラウンドの人が集中治療分野に来た際に、

  • 思ったように機能できないということは普通であること
  • その障壁がなににあるのか

 

を知ってもらうことが主な目的でした。

 

これは実体験から来るものでもありますし、実際に小児科医がPICUに短期研修にきたり、集中治療を志してきたりする際にみた彼ら・彼女らの苦悩をみてきたことからくる個人的な印象ではありますが、

 

結構きついもんがあります。

どの科でもあり得ることだと思うんですが、

小児科の後期研修医2-3年目って結構自分で仕事をルーチンでこなせることが多くなるんですよね、そこで生まれる万能感や、逆に生まれる「できなかった時の失望感・無力感」はそこそこあると思うんです。

それが、同じ小児分野でしかもどちらかというと、臓器専門分野ではなく総合診療的要素を含む集中治療に来る際は、なんとなくうまくやれるんじゃないか感がどこかしらあるみたいなんです。

そして集中治療的思考と小児科的思考のギャップに苦しんでしまうという。

 

自分が話した内容は主に、

- DO2とVO2の話

- Goals of Careの重要性

- ICUにおけるCure ~ Time, Surgery, Antibiotics~

のみっつで、

用意したスライドは50枚くらいあったにも関わらず、

5枚くらいしか進まずに時間がきてしまったんですが、まあそれはいいとして

なぜそこまでしか進まなかったかというと、その一つ一つに時間をかけて説明する必要があると、講義の中で感じたからなので、後悔はしておりません

 

つまり、

一般小児科をしているときにはDO2の議論は日常診療の中で頻繁には出てこないし、

特に日本の小児医療においてGOCが議論される機会は実際必要としているよりも少ないと思うし、

ICUのことはICUで学べばいいし、

 

それを小児科に帰ったときに活かしてくれたらいいですし、

もしくは将来集中治療を志してくれるのであればそれをこれから突き詰めてくれたらいいなと思います。

 

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その一方で、

自分が小児科後期研修を終えて集中治療を始めた時の苦悩を強調しすぎたせいか、

終了後のアンケートに質問としてこんなのがきました。

 

「逆に小児科医が集中治療をする強みってなんなんですか?」

 

 

これはまた一つの真実だと思うんですが、

どんなバックグラウンドでもどんな経験年数でもスキルセットでも、

貢献できる場所があるのがICUだと思っています。

 

他科の経験がある人の知識やスキルは必ず生きる場面がありますし、

経験がない人の「なぜ」は日常診療への理解を深めます。

 

小児科医の小児疾患に対する知識は、患者の長期予後を想定する一助になりますし、

末梢静脈路確保を含めた手技の細かさや、患児や家族に対するコミュニケーションの丁寧さには感服することが多いです。

 

 

小児集中治療医のバックグラウンドはなんでもあり得ます。

ただ、現状として小児科をバックグラウンドにしている人がほとんどだというのが現状ですし、それに対して疑問はありません。

 

たくさんの小児科医が、集中治療に興味を持ち、学びに来てくれるのをいつでも待っていますし、

また集中治療医として一緒に働くことを心待ちにしています。