豪州と日本のはざまで小児集中治療を学ぶ

日本から豪州に渡ったPICUフェローである管理人が小児集中治療に関連するあれこれを勝手につぶやいているブログです。

【AMC Clinical】終了後の雑感

さて、前回のブログはスタートでしたが、半年を経て受験を終了しました。

 

そもそも、この試験、医師登録資格が今年の8月で切れる中で、

 

自分の豪滞在を半年伸ばすためだけの目的で受験をしようと思い立ったのです。

8月の再登録に間に合わせるためには、

大体3ヶ月前の申請が必要で、

試験の結果が返ってくるのが受験から3週間なので、

4月上旬には受験を終了しとかないといけない計算で、

3月に当初試験の予約をとったんですね(この予約取りも結構なもんだったけど)。

 

そうしたところが、コロナの再燃を受けて3月の試験は中止になり、

予定を1ヶ月延ばされて4月末の受験になってしまったんです。

結果が返ってくるのは5月下旬になり、8月の医師登録延長には間に合わなくなりました。

 

そこで8月に自分と雇用契約をしてくれた職場は落ち着いて、

 

「じゃあ別の方法で登録延長するね」

 

って

 

 

あれ?

 

そんなに簡単なら最初から受験しないんだけど

ってなったのが1月の下旬か2月くらいでした。

 

もうすでに試験にお金払ってるし(35万)、

 

試験対策コースもやったし(20万)、

 

色々と削ってきたし、

まあ合格して悪いことはないからと思ってとりあえず、なんとか、受験まで行きましたが、

その間のモチベーション維持はなかなか難しいものがありました。

 

開き直ってゲーム感覚で最後まで乗り切った感じです。

 

当初の目標だった1000時間の勉強時間は届かず、

ちょうど800時間でした。

半年で800時間、おおざっぱな計算で1日4−5時間程度、これに費やしてきたことになります。まあこれで合格すれば今後の人の参考にもどうぞ…

 

フルタイムで仕事しながら大学院の単位もなんとか落とさずにこれだけ確保した自分をほめたいと思いますし、家族に感謝です。

 

この試験、問題によりますがおおむね

問診して身体所見をとって診断と鑑別を言ってその管理を言う、合計8分でって

オスキーの試験なんですね。

 

まあそれがなかなか辛い。

勉強している時に感じていたのは

・口がまわらん

・英語の診断名がわからん

・英語の解剖学的な身体部位がわからん

・カバーする範囲が多すぎて鑑別が覚えられん

 

だったんですが、実際本番やってみるとそれ以上に

・パフォーマンスが落ちる!!

ということでした。

 

日本の試験って国家試験から専門医試験までほとんど筆記試験でまれに口頭試問があるくらいと思いますが、このオスキーというのは、厄介ですね。自分の思っている力を出すのが難しい。英語のせいもあるけど。

 

とりあえず、終わったし、上記の通りこれパスしなくても次回はないので、ゼノブレイド3の発売までゼノブレイドの1と2を終わらせておこうとわくわくしています。

 

また振り返りながらAMCの記録は残しておきたいと思います。

 

んではまた

 

 

【AMC Clinical】スタート

ビクトリア州はワクチン接種率上昇を受けて、世界で最も厳しく長いロックダウンに終わりが見えてきました。

と、みんなが喜んでいる傍でひっそりと職場でPrimary close contactに認定され、14日の出禁をくらっています。

部屋も家族から隔離し、食事を運んでもらい、電話でコミュニケーションとるという。

ただちょっとラッキーではあったんです。

AMC Clinicalの準備を始めました。

 

 

これまでの話

前回の話の通り、私の豪州医師登録免許は来年で切れてしまいます。

k-doc.hatenablog.com

 

ただ、もう来年の雇用も決まっているので、どうにかしないと自分も雇用主も困るというところで、どうにかしないといけないというところです。

 

まあ個人としてはもう更新できなかったら帰国して半年くらい仕事しなくていいかなとかも思っていたんですが、まあそこは色々と環境のこととかいろんなタイミングとかあり、

とりあえず更新に向けて動き出すこととしました。

 

 

医師登録更新の選択肢

とりあえず雇用先と相談して、どうやって更新するか。選択肢は三つ。

 

1. AMC clinical をパスして、General registrationにapply

2. AMC clinical をパスして、制限付きGeneral registration(with conditon)にapply

3. Limited registration をre-apply

 

これがどれも無理なら帰国です。

ただまあ一応、雇用先は最悪でもre-applyでいけるって自信があるようです。結構難しいという話(というかほぼ不可能)という話も聞くんですが、そこらへんはよくわかりません。

 

ちょっと一つずつ、プロセスと個人的なバリアを振り返ってみます。

AMC clinicalについて今の時点でわかっていることについては、後に記載。

 

1. AMC clinical をパスして、General registrationにapply

これは単純で、Standard pathwayに行くってことです。ここを通ればオーストラリアでの診療に制限がなくなります

ただ個人的なバリアとしては、Rotationをしていないということです。

通常、General registrationにはAMCの試験に加えて内科、外科、救急を含めた一年のローテーションが必要になっています。ただ、自分はこれをすることに(キャリア的に)メリットがないのと、何より、更新期限まで1年を切っていて現実的にこれをする時間がないので、ローテーションなしでGeneral registrationに申請しないといけません

 

これについてはスーパーバイザーからのレターが、「レジデントレベルの診療が可能であること」を証明するということになりますが、これを医師登録機構が認めるかどうかはかなり不透明なところです。一応、オーストラリアでも成人領域で診療したので、複数からレターをかき集めてこれに申請することになると思います。

2. AMC clinical をパスして、制限付きGeneral registration(with conditon)にapply

これは、ローテーションしてないことの続きになるのですが、要は診療科が制限された状況でGeneral registrationを申請するということになります。

おそらく自分の場合は小児領域、もしくは集中治療領域に限ってレジデントレベルの診療が保証される(スーパーバイザーからのレターで)ので、その領域に限って診療可能、ということになります。

正直なところ、現時点ではこれでも困らないので、制限なしのGeneral registrationよりも可能性はあるというところです。

これに関しては雇用先も前向きでした。

 

3. Limited registration をre-apply

ここの可能性については不明なんですが、通常4年のLimited registrationが切れてしまうと再度それにアプライするのは結構難しいと言われたことがあります。ただ、雇用先は当初はこれで話を進めるつもりだったらしく、詳細をメールに書いて送ってきました(ビザの延長や書類提出の時期について全て)。なので、おそらくはAMC Clinical にパスしなくても、大丈夫なのかなあ、といったところ。ただ、医師登録機構としては「General registartionを取る意思」をみる目的でも、受験していることは、落ちたとしても、プラスになると言われた(パワハラなんじゃねか)

 

色々な状況やメリットデメリット、不確定事項を含めて、AMC Clinicalを受験することにしました。まあこれについてはそんなんせんでもLimitedをre-applyすればいいじゃないか、という意見もあるのですが、色々とIMG: International Medical Graduates と話をしていると、

絶対受けてGeneral Registartionとれっていうんですよね。そこのメリットが、彼らと自分とで同じかどうかというところはありますが、時間も制限された状況ではあるのでとりあえず一発勝負で時間を決めて受験するという方向で決めました。

 

AMC Clinicalについて

となるとまずは情報収集。

概要

いわゆるOSCE試験です。16 Stationを回って、2つはPilotでカウントなし、なので計14ステーションのうち10ステーションでパスすれば合格。

14ステーションはMedical, Surgical, ED, Paediatric, OGなどなど。

各ステーションでは、最初に患者情報とお題が書かれたものを見せられ、2分間考えて、いざ患者と対面して8分でそのタスクをこなすという試験。これが概要。

 

難易度

これは難しいと言わざるを得ません。現在明確な合格率は発表されなくなりましたが、受験者から言わせると、毎回の試験日の合格率は10−15%とのことです。

これは自分が聞いたことあった20-30%よりも低い数字でやや意気消沈。

USMLEを受験した人が落ちたりもしている。なので、これはAMC MCQとは違って、「自分の自分に対する期待値を上げていかないといけない試験」だと理解しました。

 

準備期間

概ねフルタイムで3−4ヶ月と言われています。これを翻訳すると

フルタイム→勉強時間8−12時間x 7days x 4 weeks x 3-4months= 672-1344 時間。

この膨大な時間を仕事しながらどうやって確保していくかと、受験時期を都合よく予約できるかが鍵。

しかもこれで準備しての合格率10-15%、、

 

準備方法

この試験は受験者たちから言わせると、

「ゲーム」

なんだと。

つまり、いくら医学的知識があってそれをパフォーマンスできても、彼らのルールの上でそれをパフォーマンスできないと点数に繋がらないとのこと。

なので、この試験に関しては8割の合格者がいわゆるコースを受講することを勧めてきます。

つまり予備校ですね。この試験のルールを理解し、それをトレーニングする目的で。

 

このコースが高い。そして基本フルタイムで勉強している人たちを相手にしているので講義の時間が概ね日中。

たいてい大手がいいって話と、大手はAfter hoursのコースを設けているので、必然的にそれになる。

 

さらに重要なのでロールプレイ。これはひたすら練習しろと言われる。なので、コースが始まったらコースの仲間や、周りの過去に受験した友人、家族にお願いして患者役になってもらって練習するらしい。

 

受験費用

3500オーストラリアドルくらい。

 

 

・・・ここまでが今わかっていること。

 

ああ、あと。

 

自分の不得意を知る

自分は試験は得意でない。

大学受験も含めて一度のアテンプトでパスした試験は、しなかったそれよりも少ない。

しかもPassing rate10-15%て、医学部受験以来じゃないか、それを3−4ヶ月で、働きながら、大学院行きながら、家族と年末年始過ごしながら、できるんかって、話なんですけどね。

 

客観的には勝算はかなり低い。

まあこっから一気に方針を変えてAMC clinicalに向かっていく当ブログ、乞うご期待!!!

 

 

 

【豪州臨床】次回以降の医師登録更新はないよ、と通達された話。

どうも。

 

メルボルンは週末を経てサマータイムに以降しました。

未だにこのサマータイム制度を続けているのに理解が苦しむところですし、

何より生活のアジャストがボディブローの様に効いているので早く撤廃してほしいところですが、

 

とりあえず日本との時差が1時間増えて2時間になりました。

これも地味にきつい。

 

それはさておき。

 

 

前回ご紹介した通り、私はLimited registrationという登録で現在オーストラリアでの診療を許可されており、そのregistrationをspeciality pathway からstandard pathway にAMC MCQという試験を受けて3年目から4年目の臨床へと移行しました。

 

k-doc.hatenablog.com

 

さらに、通常の就職活動を経てから来年の就職先も確保しました。

ただこのLimited registration、pathwayの種類に限らず4年目以降は更新が難しい(書類にはmay notってやや曖昧な表現してある)と知られています。

 

個人的には曖昧にして医師登録機構からなんか言われたらそれに従って動けばいいと思っていたのですが、その通知がつい先日届きまして。

 

それがタイトルの通りです。

要点としては

  • 次回以降のLimited registrationの更新はいたしません
  • なので1年以内にGeneral registartionもしくはSpecialist registartionにアプライしないとあなたの医師登録を抹消いたします
  • じゃあ頑張って

 

さあどうしたことか。

 

ここで私個人の問題点が複数あります。

  1. General registrationをとるにあたり

    - AMC clinical をパスする必要がある
    →これは頑張るしかない

    - 計12ヶ月のローテーション(内科・外科・ERそれぞれ)が必要
    →すでに登録が切れるまでに12ヶ月切っておりそもそも無理

  2. Specialist registrationをとるにあたり

    - PICUの専門医機構に乗るは現時点では無理と年始に学会に確認済み
    - 小児科専門医の移行は無理

なので残された選択肢としては

  • ローテーションをしないでGeneral registrationをとる方法を探っていく(文書に記載はある)
  • 救急専門医でのSpeciality pathway移行を狙う(臨床経験の背景からおそらく無理)
  • もう一度Limited registrationを申し込み直す
  • 帰国する

いずれにしてもそのあとは帰国するつもりだったので、それが半年早くなるかどうかだけなので、

色々する価値があるかどうかも含めて、ちょっと情報収集していきたいと思います。

差し当たって知人に当たりまくった結果、今の時点では

 

「いやいや、ボスに頼んで一筆書いてもらいなよ、延長とかすぐできるぜ」

 

ってレバノンの同僚がなに言ってんだみたいな顔しながらドヤってきたので、抜け道は色々あるみたいです。

 

ただそれもだんだんと厳しくなってきていて、

就職決まっていたのに帰国を余儀なくされた同僚も複数見てきたので、自分もそうなってもおかしくないなあと、覚悟も決めている感じです。

 

 

こちらにきてからというものの、日本では心配しなかったことに色々とストレスを大きく抱えています。

例えばこの医師登録も、ここオーストラリアに居座るだけのために多大な時間とお金と労力を費やしています

将来的に永住を決めているならまだしも、そうでない自分にとってはなかなかの痛手の繰り返しですが、

 

 

まあどうなるか乞うご期待。

AMC clinical は記念受験になるかもしれませんが、レバノン人の同僚はなぜか

 

「お前が受けるならめっちゃ協力したるよ!とりあえず申しこめ!いつだ試験日は!?」

 

って自分以上にやる気です。

 

不確定な未来にため息が止まない毎日です。ちなみに外は雹が降っています。

 

また次回。

 

【豪州臨床】専門医なし、general registration なしで臨床を4年以上やる方法。AMC MCQ対策含

12ヶ月の成人ICUを終えて、小児病院のICUに戻りました。

自分は2018年8月にオーストラリアで臨床を開始、2年を小児ICU過ごし、

2020年8月から成人ICUで臨床をする機会をもらいました。

計三年を経て、再度もともといた小児病院のPICUで働く機会をいただき豪州臨床4年目になります。

 

 

オーストラリア臨床4年目を迎えるまでの道のり

現在の職場から出て「戻ってきた」という表現にはなりますが、

これに至るには色々と障壁がありました。

 

障壁1:自分は正規のオーストラリアのトレーニーでない

これはオーストラリアでの正規のライセンスを持っていないので、
どれだけ長い期間働いてもこちらの専門医等には寄与しないということです。


また雇用側は外国人ビザのスポンサーになる必要があるので、

雇用することでのメリットはないことだけでなく、
スポンサーとしてその費用を負担しなければならないということがあり、
地のトレーニーと比較した場合に外国人を採用する理由はよっぽどでない限りないので、
就職活動は困難を極めます。

実力は関係なく、運とコネ、この二つが全てを決めます。

 

自分の場合、成人ICU臨床の機会をオーストラリアで求めて、いくつか就職活動をして、
いろんな理由で断られて、

 

あーもう帰国するかー

 

ってなっていた2020年の6月頃に

 

たまたま、

成人ICUに空きが出て、そこに小児ICU側からの推薦が重なり、成人ICUでの臨床する機会を与えてもらいました。

 

コロナの状況でオーストラリア全体として外国人医師の流入が遅れ、
また救急集中治療領域での採用枠が増えたこともあって、

 

本当にラッキーでした。

 

障壁2:医師登録の制限

以前、こちらのサイトでも外国人がオーストラリアで臨床するためのパスウェイを紹介しました。

k-doc.hatenablog.com

私は当初、ショートタームトレーニングパスウェイと言って、

こちらの学会の容認のもと外国人医師が短期間トレーニングする目的でくるパスウェイで来ました(上記の記事では Short term training in a medical specialty pathwayと正式名称で表現しています)。

これは学会によって臨床可能期間に上限があるのですが、

ICUの場合は概ね2年、運が良ければ3年、と言われています。

 

前述の通り、コロナの影響で2年から3年に伸ばすところは学会はすんなりと承認してくれました。

ただ、3年目から4年目のところは「もう延長しない」と明言されたので、パスウェイを変更しないと私の4年目はないことになりました。

 

医師登録の変更

ショートタームからのパスウェイの変更にはいくつか方法がありましたが、私が可能性を探したのは

  1. 日本の専門医資格をオーストラリアのものに変更すること
  2. オーストラリアの正規の医師免許をとるルートに乗ること

でした。

 

 

  1. 日本の専門医資格をオーストラリアのものに変更する

    自分が有する専門医資格は小児科専門医と救急医専門医でした。今思えば集中治療専門医を取ってくるべきだったと思っています。

    日本の小児科専門医はオーストラリアの小児科専門医とプログラムが全く違い、コンバートがまず不可能です(小児科専門医を終えてさらにいろんな分野を専門的に研修した卒後15年目くらいならいけると思う)。なのでこれはパス。

    救急専門医で登録して集中治療を続けられるか不明だったのでこれもパス。ということで、この案は断念。

  2. オーストラリアの正規の医師免許をとるルートに乗ること

    つまり、それまではビザと学会と医師登録機構のみっつで自分の医療行為ができたところから、学会の縛りをなくそうというものです。

    やり方は簡単で、いわゆるオーストラリア版USMLEであるAMC: Australian Medical Council の試験を受けるということになります。この試験にはstep1 であるMCQと、step2であるオスキー試験がありますが、Step1をパスすれば、制度的には臨床業務が可能になります。

 

上記から、Step2を受けるつもりはない中でStep1のみ受験し、すっげえギリギリでパスして、無事4年目を迎えているのでした。

 

AMC MCQ対策

MCQに関しては、良い点数を取らなければならないものでもないので、気は楽でした。IELTSの方が苦しかった。

 

MCQの自分の勉強方法は、ひたすら過去問を繰り返す。です。これだけ。

専門の過去問集があるのですが、それをひたすら4周くらい繰り返しました。この間半年だったかな?コロナで延期があったので、それもラッキーでした。

落ちても後に響くものはないので痛くはないのですが、痛いのは出費で、

一回の受験料が日本円で25マン円くらいします(!!!)

 

結語

ということで、専門医なし、general registrationを最後までやり遂げずに4年目にオーストラリア臨床突入した経緯を紹介しましたが、

ここまできて思うのは、

  • 日本で専門医とる前なら最初からGeneral registrationをとるための準備をすること
  • 専門医取得後であれば、該当する専門医をしっかりとってから来ましょう

ってことで、決して私の経緯はおすすめできるものではありませんので、悪しからず!!

集中治療専門医とってきとけばよかったって、後悔しています!笑

 

【雑観】終末期における選択肢

あたりまえではあるけど、利用可能な医療リソースが違うことで起きている日常診療の選択肢の違い、というのがいまさらながらに目の前に転がってきて、これはこれで興味深い。

日本でみたものは、移植の選択肢が薄いからECMO導入をためらう、挿管したあとの緩和的抜管が一般的でないから挿管をためらう。

いま目の前でみているものは、可能性がありそうならとりあえずやって考える、いま決めきれないならとりあえずやってあとで決める。という感じ。

前者のようなためらいは、必要なんだとは思う、ただ、その時その時でとれる選択肢が多いのは、医療者を楽にはしてくれる。患者はどうかは、わからない。

逆に苦しくしてしまっているかもしれないし、楽かもしれない。

 

そもそも選択肢がなく「それを受け入れるしかない」という状況であれば、悩まなくていいし、比較するものもない、というのは一つの真理ではあるから。

 

ちょっと前になるけど、集中治療学会の小児の終末期のシンポジウムでみたのは、国内での二極化。

看取れる施設があることと、看取れないから気切をせざるを得ない(それ以外に選択肢がないから特にそれが正しいとか間違っているとかいう議論も生まれていない)施設。

 

看取れる施設は前にステップを踏んでいる。そりよい看取り、よりよい選択をするための取り組みや教育が始まっている。

 

そこに個人的には光を感じた。

 

【雑談】オーストラリアにきてから初めて引っ越した話。

3月に引っ越しました。

特に予定はしていなかったんですが、

ずっと続いていた床下の水漏れが直らず、悪化の一途をたどる中でさらに急激に悪化。

いたるところの床の板の継ぎ目から水が染み出し、しかも原因が不明であるため大規模な工事が必要となり、家主があきらめてわれわれ家族に引っ越しを要求したという流れでした。

 

安全でないわけではないものの、住めないのは自明だったので引っ越すしかなかったのですが、それにあたって一番問題だったのは、こどもの学校でした。

こちらにきてから2年半たち、学校にも慣れて特定の中のいい友達もできたのでもちろん転校はしたくない。学期の途中でしかも非常に急な出来事であり、親としてもその気持ちは十分くみ取れる状況ではあったので、いろいろと内覧した結果結局のところこどもたちが転校しなくていい距離の場所で新居を決めました。

 

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オーストラリア(ビクトリア?)の賃貸物件の流れは、日本とは大きく異なるところがあり、それは早い者勝ちではないところです。

日本では不動産に行ってめぼしい物件が開いていればそこで契約が成り立つと思いますが、

こちらでは

内覧日が事前に告知→アプリ等でその情報をとる→内覧の予約→内覧→気に入れば申し込み→家主が納得する人に貸すこと決定

という感じです。

 

なので住みたいところが空いていても、そこに住めるとは限りません。

われわれも内覧を繰り返し、複数物件に申し込み、結果を待ちながら、やきもきした日々を過ごしたので新居が決まったときは本当にほっとしました。

 

申し込み時にはビザ、収入証明、残高証明、雇用証明等の書類が多数必要となり、また記入事項も多く、個人情報は丸裸になります (笑)

 

それでもまあなんとか、悪くないところに落ち着いたのでほっとはしているのですが、

家賃はこれまでの1.5倍になったので、仕事頑張ります。。

 

新生児~小児期のECMO後フォローアップが必要である。という論文

f:id:K-doc:20210303005824p:plain

ECMO 小児の頸部カニュレーション図

こちらから。https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2776777

 

新生児期小児期のECMOは成人と比較して頸部のカニュレーションの頻度が高く、

しかも頸動脈カニュレーションしたあとは結紮してしまうことも多いので、

神経学的な発達が遅れることは過去にも報告があり。

それに加えていずれにしてもECMO後の小児には読書の能力やコミュニケーション、行動の問題が伴うことが多く、学校で困ることもでてくるので、フォローが必要なんじゃないか、

それにはECMOセンターからスクリーニングを開始し、リハビリやフォローアップを地元の小児科で行う、もしくはテレヘルスでフォローアップしたほうがいいんじゃないか、

っていう結論。

 

もうECMOがいいとか悪いとかいう話はあんまりみなくなった気がする。

必要なときは必要だし。

 

そこじゃなくてもっと別のところでECMOの成績をよくしよう、成人や新生児のエビデンス使ってるだけじゃなくて小児期でのエビデンスをもっとだしていかなきゃってメッセージ。

 

 

症例数がたくさんあるから見えるデータと臨床とそこから生まれるメッセージ。

 

集中治療学会の配信を先日見たけど、

日本の小児ECMOって各地に散らかっていて、こらあかんなあって関西人じゃないのであかんなあって言葉が出てきちゃうような感じ。

 

ECMOって、通常の重症管理から搬送とその鑑別診断と、その後の移植やpalliative careを見越すなんかIntensivistとIntensive care nurseと病院の内科外科全体の力量が試されるから個人的には好きなんだけど、

回すだけに集中すると本当に大事なところの視点が抜けちゃうんだよな

 

また、

このJAMAの論文のタイトルをみて、

内容を読む小児科医がどれくらいいるのか、

内容をよんだとしてピンとくる小児科医がどれくらいいるのか、

気になるところではある。

 

ECMOの啓発はコロナでだいぶされた気がするけど、(幸運にも)小児分野ではそうでもなかったから、認知としてはまだまだなんだろうな

 

これってどうすべきなんだろう。

ひとつの形は愛知みたいな集約・搬送モデルなんだろうと思う。

いきなり日本全体では難しいから、

地域で啓発する。地域で連絡をとる。地域で症例を運んで集める。日本で発表する。

(その「地域」は施設とか地理とかでだいぶ規模が変わりそうでそれを受け入れないといけない)

 

そして発表の場はできれば小児科学会のほうがいいのかもしれない。

日本で重症小児の初期診療にあたるのは小児科医だから、集中治療学会で話をしても、実際診療をする人たちはきいてない(自分も小児科学会へ参加する意欲を失っているけど)(そしてこれは終末期も同様)

 

「地域での活動」、「適切な場での報告」、「それができる臨床とデータ管理の土壌の構築」

それができる施設で、ECMOやっていくべきなんだと思う

そして目の前でECMOが回ったとき、この子をどう生かすかだけじゃなくで、

どうフォローしていくかを考えていかなきゃならん

 

段々と長い視野にしていかないかん

小児医療の本質として、できるだけ未来をみらんと